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第2号配信「動き出した『民間法制局』にご注目ください」(2006.01.13)
百年に一度といわれた今般の司法改革によって裁判員制度や裁判迅速化、法科大学院など数多くの制度改革が実現しました。司法改革は政治改革、行政改革、規制改革、経済構造改革、地方分権などこの10数年間に進められてきた諸改革の結節点であり、その要(かなめ)に位置する改革です。

物語で見る21世紀臨調それには様々な側面がありますが、政治改革の観点から見れば、国民が「統治客体」意識から脱却し「統治主体」として成熟するとともに、日本社会のさまざまな分野に官主導体制を克服する上で必要となる人材を供給していくための改革であったと思います。

一般に官主導体制の克服というと、経済活動等が「事前規制・裁量型」から「事後チェック・ルール型」に移行することとの関わりで法曹関係者の役割の重要性が論じられがちですが、求められている役割はそればかりではありません。

より大切なことは、法律的思考に富んだ有意な人材を数多く養成することを通じて法律家が国や自治体などの公的な政策決定過程に積極的な関わりを持ち、その経験と知識、ノウハウを「法の解釈」にとどまらず、「政策の立案や立法活動」に生かしていく仕組みを作り上げることにあります。そうした人的、制度的な基盤が十分に整備されることによって、初めて、政党や政治家は官僚機構と対抗しうるだけの態勢を確立することが可能になるのだと考えています。

編集長より法曹関係者によるこのような取り組みは国民が政治に関わるためにも不可欠です。今も昔も、様々な民間団体やシンクタンクが政府や政党に「政策提言」を行っています。しかしこれらの提言も法律的な表現を持たなければ、受け取る側からすれば単なるアイデアにしかすぎません。政策の多くが予算や法律として実現を図られる以上、それを法律的に表現する発想と手段を国民の側が持たなければ説得的な対案にはならないし、また当事者からすれば、「脅威」とも映らないのです。

すべて政策は「細部に神宿る」です。官に立法にかかわる機能を事実上独占され、法案作成の「細部」の詰めや法案審議を全面的に依存せざるを得ない現状をそのままにしていては、政治主導体制の確立は望むべくもありません。一連の司法改革の成果として弁護士が法制度の解釈よりも法制度の立案や改革に関心を持ち、その取り組みに立ち上がることは、政治改革に取り組んできた私たちが長年待ち望んでいた姿であると言えます。

今回、21世紀臨調の活動に参画する弁護士有志13名の手で「政策形成過程における弁護士の役割を考える会」(通称、民間法制局)が結成されたことは、この意味で、これからの政治改革のあり方を左右するきわめて重要な動きであると認識しています。代表を務める尾崎純理さんをはじめとする弁護士の皆さんは、それぞれ、長年にわたって司法改革に取り組んでこられた方々であり、司法改革と政治改革とをつなぐ大切な役割を果たされていくことになると思います。

編集長より法律を「読むこと」「解釈すること」と「書くこと」「作ること」との間には大きな隔たりがあります。これまで法曹関係者は、法律は解釈するものとして捉え、法律を作るという意識は希薄でした。民間法制局が制度や政策を「作る」という意識に立って法律を「書く」という行為に挑戦することは、弁護士が法律家として立法補佐活動の一翼を担うことの決意表明に他なりません。

民間法制局は当面の課題として国民の視点から現在の公職選挙法の体系的な見直しに取り組む方針です。公職選挙法の改正は21世紀臨調にとっても長年のテーマであり、いま現在も超党派の政権公約推進議員連盟と連携して検討作業を進めています。民間法制局の活動はこうした21世紀臨調本体の提言活動や政党、政治家の検討作業を下支えする重要な役割を担うものと思われます。

選挙は、主権者である国民がその権利と責任を行使する最も重要な手段です。一連の政治改革の中で国、地方を問わずマニフェスト選挙が定着し、「政策本位の選挙」を求める国民の声はかつてないほど高まっています。民間法制局がその活動の第一歩を公職選挙法の再検討に定めたことはきわめて本質を突いた選択であり、今後の活躍が期待されるところです。ご注目ください。                       
                                                                                                               (前田 和敬)

                 
                                     


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